デカフェコーヒーってどうやって作るの?

コーヒーからカフェインだけをそっと取り除く。
そんな繊細な作業の積み重ねが、私たちが安心して楽しめる「デカフェコーヒー」をつくっています。

こちらでは、デカフェコーヒーがどのように作られているのか、その仕組みや技術をやさしくご紹介します。

目次

デカフェの基本|「カフェインを取り除く」とは?

「デカフェ(decaf)」とは、コーヒー生豆から90%以上のカフェインを取り除いたコーヒーのことです。
この“カフェイン除去”は、焙煎の前、つまり生豆の段階で専門的なプロセスを使って行われます。

日本で手に入るデカフェコーヒーのほとんどは、水や二酸化炭素など自然に近い方法でカフェインを取り除いたものです。薬品を使った製法は使われておらず、安心して楽しめます。

主なカフェイン除去方法

■ ウォータープロセス(Swiss Water Process)

化学薬品を使わず、水の力だけでカフェインを除去する方法です。
生豆をお湯に浸してカフェインと風味成分を引き出し、活性炭フィルターでカフェインだけを取り除いたあと、風味成分を保った水に新しい生豆を浸して処理を繰り返すという、やさしい手法です。

この方法にはいくつかのバリエーションがあり、たとえば:

  • カナダ・ブリティッシュコロンビア州にあるSwiss Water社による「Swiss Water Process」
  • メキシコ・コルドバにあるDescamex社による「Mountain Water Process」

などが代表的です。
どちらも薬品を使わず、自然に近い方法でカフェインを除去するプロセスとして、世界中で高い評価を受けています。

特徴

  • 水の力を使って、生豆からカフェインをやさしく抽出
  • 香味成分は保持しつつ、物理的なフィルターなどを使ってカフェインだけを除去
  • スイスウォータープロセスでは活性炭フィルターを使用、マウンテンウォータープロセスもこれに準じた安全な方法で処理
  • オーガニック認証を受けた豆にも多く採用されており、やさしい風味が特徴

→ やさしい味わいと安心感を両立できる方法であり、日好珈琲でもよく使わせてもらっています。

■ 超臨界二酸化炭素抽出法(Supercritical CO₂ Method)

コーヒー生豆を高圧の二酸化炭素(CO₂)で処理し、カフェインだけを取り除く方法です。
このとき使用されるのは「超臨界状態」のCO₂。
これは、気体と液体の中間のような特別な状態で、液体のような溶解力と気体のような浸透性をあわせ持っています。

この性質を利用することで、コーヒー豆の細胞の奥までやさしく入り込み、カフェインだけを選択的に抽出することができます。

特徴

  • 使用されたCO₂は回収・再利用でき、環境への負荷が少ない
  • 高温(約31℃以上)・高圧(約73気圧以上)に保たれたCO₂を当て、カフェインを溶かし出す
  • 風味成分にはほとんど作用せず、香りやコクをしっかり保ったまま処理が可能

■ 液体二酸化炭素抽出法(Liquid CO₂ Method)

液体状態の二酸化炭素(CO₂)を用いて、コーヒー生豆からカフェインだけを取り除く方法です。
こちらは「超臨界状態」ではなく、それよりも低温・低圧の条件で液体CO₂を使用するという点が特徴です。

この方法は、超臨界法に比べて処理がより穏やかで、豆の繊細な香りや個性を損ないにくいとされています。

カフェインの抽出力はやや抑えめですが、風味保持とコストのバランスが取れた方法として注目されています。

特徴

  • 比較的、低温(20〜25℃前後)・低圧(60〜70気圧程度)で処理できるため、デリケートな香味成分が守られやすい
  • CO₂は使用後に回収・再利用可能で、環境にも配慮された方法
  • 超臨界CO₂法に比べると導入コストが抑えられる

■ 有機溶媒抽出法(Direct / Indirect Solvent Method)

カフェインにだけ強く作用する「有機溶媒(ゆうきようばい)」を使って、コーヒー生豆からカフェインを除去する方法です。
1970年代〜1990年代初頭にかけては、世界的に最も広く使われていた方式のひとつです。

使われる溶媒には、主に以下の2種類があります:

  • 塩化メチレン(ジクロロメタン)
  • エチルアセテート(サトウキビなど天然由来のものもあり)

これらの溶媒は、カフェインと結合しやすい性質を持っているため、短時間で効率よくカフェインを除去できます。

処理方法には2つのタイプがあります

直接法(Direct Method)

生豆を蒸して柔らかくした後、直接有機溶媒にさらしてカフェインを除去し、最後に熱風で溶媒を飛ばします。

間接法(Indirect Method)

生豆をお湯に浸して、カフェインと風味成分を溶かし出した抽出液に溶媒を加えてカフェインだけを除去し、香味成分を含む液を再び豆に戻す方法です。

特徴

  • 短時間で効率よくカフェインを除去できる
  • 香味成分の損失が少ないとされ、味の再現性に優れる
  • 使用する溶媒は、厳しい国際基準のもとで管理され、最終製品にほとんど残留しない
  • 近年は、安全性やナチュラル志向の高まりから使用例は減少傾向
  • 日本国内では、食品衛生法によりこの方法で処理された豆の流通はほぼ見られない

備考:エチルアセテートは“ナチュラル”なの?

「エチルアセテート」は、サトウキビや果実由来の発酵成分から抽出されたものを使うケースもあり、
「天然由来」と表示されることがあります。ただし、それでも薬品を使用する方法に分類されるため、
オーガニック認証には適さないことが多いです。

日好珈琲では…

日好珈琲では、薬品を使用しない自然な方法(水抽出法・CO₂法)によって処理されたデカフェ豆のみを使用しています。

おまけ|“はじめからカフェインを持たないコーヒー”も作られるかも?

ここまでご紹介した方法は、「収穫した豆からカフェインを取り除く」ものでしたが、
そもそもカフェインを含まないコーヒーノキを育てようという研究も進んでいます。

例えば:

  • 自然界に存在するカフェインの極めて少ない品種(チャラ種など)を活用する
  • 遺伝子編集や交配によって、カフェインを生成しないコーヒーの木を作る

といった試みが、世界各地の研究機関で進められています。

まだ一般に出回るには時間がかかりそうですが、「最初からデカフェ」というコーヒーが当たり前になる日がくるかもしれません。

まとめ|おいしくてやさしい一杯の裏側に

デカフェは、ただ「カフェインが少ない」だけのコーヒーではありません。
見えないところに、たくさんの手間とやさしさが詰まっています。

日好珈琲では、
「おいしくて、安心して飲める」ことを大切に、
カフェイン除去の方法にも目を向けながら、豆を選び、焙煎しています。

夜に飲みたいとき。
カフェインを控えたい日。
そんな毎日の小さなひとときに、そっと寄り添える一杯でありますように。

この記事を書いた人

管理栄養士が焙煎する
デカフェコーヒー専門店『日好珈琲』です。
実店舗はなくネットショップのみで、豆選びから焙煎、梱包、発送までを
私1人で行っている小さなお店です。
カフェインでお困りの方に、安全で美味しいデカフェコーヒーをご注文ごとに焙煎してお届けしています。

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